大統領選前には関心が低いとしてほとんど注目されていなかった中絶や同性婚の記事が、今になってじわじわと出てきたと感じられるところであります。まず、投票当日に全米36州で住民投票が行なわれたのですが、そのうち同性婚問題を取り上げたアリゾナ、フロリダ、カリフォルニアで行なわれた住民投票の結果、同性婚憲法上禁止になり、それによって、憲法上、同性婚を禁止するのは30州近くになりました。ちなみに、その問題のProposition 8というのは、
http://www.voterguide.sos.ca.gov/text-proposed-laws/text-of-proposed-laws.pdf#prop8
にありますように、きわめて短いものです。たったこの数行をめぐって賛成派、反対派のおびただしい情報が溢れ、史上記録的なコストが投入されたようです。


Spending for and against Proposition 8 reached $74 million, the most expensive social-issues campaign in U.S. history and the most expensive campaign this year outside the race for the White House.


同時に、カリフォルニア州の「人工妊娠中絶と親への告知」"Waiting Period and Parental Notification Act of 2008"については、
http://ag.ca.gov/cms_pdfs/initiatives/i722_07-0053_A1S_Initiative.pdf


Child and Teen Safety and Stop Predators Act: Sarah's Lawとありますように、大学生以上の大人や軍隊内でのレイプというより、10代の妊娠が本当に深刻視されているようですね。監護義務全般の強化につながります。


一方、いわゆるローvsウエイド判決Jane Roe, et al. v. Henry Wade, District Attorney of Dallas County(1973)を最近覆したサウスダコタ州では、人工妊娠中絶の全面禁止が否決されて動きがまた戻ったようです。


とはいえ、先のカリフォルニア州では、オバマ候補に投票した黒人や ヒスパニックの多数が改正案を支持し、白人は賛成と反対に分かれた(出口調査)という興味深い報道もあります。今回私は、ここに最も注目しています。


Exit polls for The Associated Press found that Proposition 8 received critical support from black voters who flocked to the polls to support Barack Obama for president. About seven in 10 blacks voted in favor of the ban, while Latinos also supported it and whites were split.


英文の出典はいずれも
http://www.vvdailypress.com/news/marriage_9354___article.html/angeles_passage.html


いまや絶対数で白人を上回る非白人の方が、保守的である、ということになるのかもしれません。選挙人の数ではオバマ候補がマケイン候補を圧倒したものの、一般有権者投票率の差は数%しかなかったことを考えると、皮肉にも白人の発言力の相対的低下と同時にアメリカ社会の保守化の進行――古き良きアメリカを取り戻そう、皆で一つの合衆国、なども回帰だ――という皮肉な現象は、結構、相当なものかもしれません。大統領選では専ら経済金融問題に焦点があてられ、勝利宣言で彼は、一年や一期では出来ないかもしれないと予防線を張りましたが、全部民主党が制覇したこの状況にもかかわらず、自動車の生産回復、住宅価格の安定的上昇という、一般有権者に分かりやすい数字を出していくことがすぐに出来ないということになれば、大変です。そのため既にボツボツ指摘が見られる通り、国際問題で協調路線をとるのは、同盟国さん達がんばってねということですし、内政重視で内向きに=対日が経済的に一層厳しくなる予感。スタッフの選定が伝えられていますが、既に基地問題で危惧されるように、アメリカの国益のための選りすぐりメンバーであるということで、ほろ苦いまなざしを向けざるを得ない・・・。昨日今日の各紙を見た限りでは、今のところ民主党内でこの辺りを理解して発言しているのは前原氏だけの模様。