日経

所得分配、成果を重視・キューバ議長にラウル氏
 【ハバナ=檀上誠】キューバで24日に誕生したラウル・カストロ国家評議会議長を中心とした新政権は、疲弊した経済の再建に取り組む。かつてはソ連、現在は石油収入で潤うベネズエラからの支援で維持されてきたが、2種類の通貨が併存する経済制度などの矛盾も蓄積している。平等をめざしてきた共産主義体制の枠組みを維持しながら、経済の自立を図るのは容易ではない。

 ラウル氏は就任演説で「現在の経済状況が続けば基礎食料の配給制度は成り立たなくなる」と指摘した。同時に、カストロ前議長の「生産できるのに生産しなかったり、成果が少ない者に贈り物をする必要は無い」との発言を引用。労働成果に応じ一定の所得格差を容認する姿勢を示した。


産経

ラウル氏は決まったが… 未知数「キューバの変化」 (1/2ページ)
2008.2.25 20:25

24日、キューバ国会で、Vサインを示す国家評議会のラウル・カストロ新議長(ロイター) 【ニューヨーク=長戸雅子】キューバの新しい最高指導者にラウル・カストロ氏が選出された。ソ連崩壊後の経済混乱のなかで、軍備より食糧確保の重要性を説いた「現実主義者」とされるラウル氏の経済改革への期待も高まっている。しかし、24日の演説では現行体制の維持を前提とする方針を表明し、事前にささやかれた革命後の若い世代の登用もなく、約半世紀ぶりのトップの交代がキューバ社会にどこまで変化をもたらすかは未知数だ。

 キューバ当局は2007年の経済成長率を7%、08年を8%と予測している。だが、在ハバナの外交筋は「そうした経済成長を実感できるような状況は見受けられない。旧市街では以前には見られなかった観光客への物ごいも報告されている」と、公式発表と現実との乖離(かいり)を指摘する。

 こうした事情も念頭にあってか、ラウル氏は就任演説で「持続的な経済強化」や「ペソの段階的切り上げ」など現実を見据えた経済改革に取り組む考えを示した。

 ラウル氏に期待が集まるのは、カストロ政権の後ろ盾だったソ連の崩壊後、軍部隊を最盛期の5分の1に縮小。軍による観光、貿易関連ビジネスなどにより、軍の財政を再建した実績があるからだ。ソ連崩壊による国内経済の混乱が、かつては「教条主義者」といわれたラウル氏を「現実主義者」にしたともいわれており、ラウル氏の「大砲より豆の方が大事だ」との言葉はよく知られている。

 
 ラウル氏は経済だけを開放する中国型の経済改革に前向きだが、カストロ国家評議会議長は反対しているとされる。米タイム誌は「カストロ氏は(改革と体制維持の)バランスをとるために、ラウル氏への監視、個人指導を続けるだろう」との専門家の意見を紹介しており、カストロ前議長が存命中は彼が望まない改革は実現しない、との見方がもっぱらだ。

 社会問題も深刻だ。教育、医療費が無料で、人口1人あたりの医師の数は日本の10倍という医療先進国のキューバだが、最近は医師の海外派遣を積極的に進めている。受け入れ国側から対価が支払われるためで、逆に国内の専門医の不足が指摘され始めた。国民の間の経済格差、教師不足による教育レベルの低下、都市交通整備の必要性なども指摘されている。

 ラウル氏は07年、体制の問題点などを話し合う職場単位の集会を開催している。集会には全国で延べ400万人が参加したとされ、国民との対話を重視する姿勢が問題改善につながるかも注目されている。

 06年の暫定議長就任後、米国にも対話を呼びかけたラウル氏だが24日の就任演説では「帝国主義者米国およびその同盟国による攻撃的で干渉を含む宣言に留意している」と、対決姿勢を明確にした。

グローバル経済下で、どういう政策展開を見せるか楽しみ。