承前

某身内もひとまず退院し、退院後の外来診察がまだなので万全ではないものの、こちらとしては、疲れが出る頃合である。暦の上では・・・といわれながらもやはり、秋の風を感じ、この都心でもついにトンボを目撃してしまい、内心の焦りを抑えきれない。


研究とは暇と金と努力の所産である
                            ――神島二郎――


私は、体力という変数も加えたい。


俗に言う「学者の心得・五箇条」によると、

1.長になるな
2.委員になるな
3.非常勤講師をするな
4.雑文(商業雑誌)を書くな
5.家事をするな


とあって、私自身が修士課程に進学したときに言われたのは、「アルバイトをするな」であった。いずれも要は、あけてもくれても学術論文の執筆に専念しろということであるけれど、「世間」も「社会」も知らない専門職ほど、浮世から敬して遠ざけられる存在は希少かもしれない。