京都新聞

Kyoto Shimbun 2008年3月25日(火)

ネグリ氏のテキストを代読
入管問題で不在 京大で講演

ネグリ氏不在で行われた講演会(京都市左京区・京都大時計台記念館)
 入国管理上の問題で来日中止となった世界的な哲学者アントニオ・ネグリ氏の講演会が25日、ネグリ氏不在で京都市左京区の京都大時計台記念館で開かれた。講演予定だったテキストが日本語訳で読み上げられ、司会の王寺賢太京大准教授たちが「思想的、学問的、文化的な交流の機会を奪われた」と日本政府の対応を批判した。

 講演会は、京大人文科学研究所の主催。来日中止に伴い、急きょ予定を変更して開催した。

 コメンテーターとして参加した市田良彦神戸大教授が、ネグリ氏の来日中止の経過を説明し、「入国管理行政は権力の恣意(しい)的な行為だ。今回の講演会は、抗議の意味を込め、やることに意味がある」と訴えた。

 ネグリ氏が講演予定だった「大都市とマルチチュード」と題されたテキストでは、大都市におけるサービス業や情報通信などの非物質的な労働から生み出される「共(コモン)」という概念が搾取に対抗する、との考えが紹介された。会場を埋めた学生や市民は熱心に聞き入っていた。

マルクス脱構築