大臣談話

民法772条等に関する質疑】
Q: 300日の問題なのですけど,無戸籍児が主要都市部だけで少なくとも127人いるようなのです。この数字というのは氷山の一角だとは思うのですけど,大臣は見直し論議を期待する発言をしてきたと思いますが,その御見解と今の通常国会での見通しについて,法改正あるいは通達などのお考えがありますでしょうか。

A: もちろん,国籍の自由というのは人権の一つにあるのです。国籍変更の自由とか,選択の自由というのは自由権の一つにあるのでしょう。しかし,それは無国籍になる自由は含まないというのがコンメンタールに書いてあると記憶しています。したがって,出生届を出さない,無戸籍であるということは,非常に良くないことであり,重要なことは,生まれてきた子供の人権や福利の問題だろうと思います。余計なことかもしれませんけれど,昨日,麻生太郎を囲む太郎会で,みんなと食事をしたときに,生殖補助医療のことについて議論をしたら,何人かの人に,ちょっと注意をされたのです。「あなたの考え方は,生まれてくる子供の側に立っていますか」と言われたのです。ああそうかと,ちょっと反省をしました。そのようなことで,この問題も子供の立場に立って考えることが大事だと思います。先程,政治家と官僚の接触禁止について申し上げましたように,私は考え方を非常にはっきりさせて物を言う人間なのですが,正直言って,300日問題は悩んでいまして,生まれてくるお子さんのことを考えると何らかの手は打たなくてはならないと思います。離婚後の証明があれば,出生届を戸籍係が受け付けてくれるというのでしょう。ところが,前夫との婚姻中にできた子供と推定された場合に,300日推定が働いて前夫の子とされ,結局,親子関係不存在確認の調停とか裁判が必要ということになり,そういうことで120何名も戸籍のないお子さんが出てしまうというのは,やはり問題があるわけですから,これは何らかの手を打たなくてはならないのですが,私もまだ迷っています。また,私の一存でできることではありませんので,与党に御検討をいただいているところでございます。何かしなくてはならないという思いだけしか,今は言えません。

Q: 先程おっしゃった生殖補助医療の話なのですが,昨日,太郎会でという話があったと思うのですけれども,どのような考えを述べられたことに対して注意をされたのですか。

A: これはもう率直に言いますけれど,私は蝶の研究を続けている関係で,生物学的なことや系統分類学のようなものに割と興味が深いのです。そこにDNAというものが出てきたでしょう。このDNAというのも非常に厄介な存在だと思うのです。しかし,DNAが分かれば両親が確定できます。つまり,「代理母を使ったという場合,これを商売にしてはいかんとか何がいかんというのはよく分かるのですけれど,でも,子供が欲しいという場合に,父のDNAと母のDNAが,精子卵子が合体したことによって生まれてきた子供であれば,やはりその子供の両親なのではないのか」と言ったのです。そうしたら,「あなたは生物学的なことを言いますけれど,生まれてきた子供の立場を考えてごらんなさい」と言われました。「元々分べん主義というものがあり,それが今も支配的なわけです。お腹を痛めて生んだ人,それが母だという考え方があるのはよく分かるのです」と言って,それはそれだけのことなのですけれども。「子供の立場から考えなさいよ」と言われたときに,ちょっと,はっと思ったわけです。いわゆるDNA的に親子だったら,それは親子ではないのという言い方をしたときに,そう言われたので。この問題もまだ私の考えはまとまっていません。