【土・日曜日に書く】ロサンゼルス支局長・松尾理也 米大統領選の奇妙な現象という記事がありました。

 
2007.12.23 03:02 ≪泡沫候補の旋風≫

 2008年米大統領選におけるインターネットの存在の大きさは、もはや衆目の一致するところだ。関心はすでに、だれが、いかにして、この悍馬(かんば)を手なずけ乗りこなすことができるかという点に移ったといっていい。ゆえに民主党ヒラリー・クリントン上院議員は第一声をインターネット上で「さあ、チャットしましょう」と発したし、CNNテレビは動画サイト「ユーチューブ」と合同で候補者討論会を行っている。

 だがそれらの動きをひっくるめても、ネットと政治とのかかわりの未来を占うという点で、ロン・ポール下院議員(共和党)をめぐる予想外の展開が与える示唆には遠く及ぶまい。インターネットによって、1日当たりの額としては過去最高額の620万ドル(約7億円)を集めたというから驚く。

 ポール候補が勝利しそうだ、というわけではない。急激に支持を伸ばしているにせよ、ありていに言って泡沫(ほうまつ)候補の位置は脱していない。そしてポール候補に「キワモノ」的印象がつきまとう理由は、彼が一貫してとり続けている急進的な「リバタリアン」的政治姿勢によるところが大きい。

 「リバタリアン」とは、極端に自由を重んじる政治的立場といえばいいだろうか。政府を自由に対する干渉とみなし、税を個人からの富の収奪として敵視し、福祉の削減を主張する。外交的には孤立主義を掲げ、イラクからの即時撤退のみならず、海外駐留米軍の全面撤退を主張する。個人の自由を最大限に尊重する立場から、マリフアナの解禁さえ主張する。

 こうならべていくと、ロン・ポールとは保守なのかリベラルなのか、わからなくなってくる。小さな政府、孤立主義的外交は保守の主張だが、イラクからの即時撤退、マリフアナの解禁はリベラルからも支持される。候補自身は保守と見なされているが、共和党の中ではけっして主流派ではない。

 だが、「保守かリベラルかわからない」からこそ、ポール候補は、新しい形態の支持を集めることに成功したのである。

・・・リバタリアンって、アメリカでもレアな存在だったのか。